In Residence:リカルド・ボフィル
スペイン人建築家が廃工場から帝国を築き上げた経緯
家には様々なものがあるが、リカルド・ボフィルの家は一味違う。スペイン・バルセロナ郊外に佇む、壮大なスケールを持つブルータリズム様式の元セメント工場だ。カタルーニャ地方の町サン・ジュスト・デスヴェルンにあるこの「ラ・ファブリカ」は、産業建築の壮大な記念碑であると同時に、従来の「家」という概念を再定義する、詩的で個性的な空間でもある。「昨今、私たちは訪れるすべての人に居心地の良さを感じてほしいと願うが、ここでのボフィルの考え方はそうではない」と、ドキュメンタリーシリーズ『In Residence』の最新作を監督したアルベルト・モヤは語る。「それはもっと深いところまで及んでいて、より精神的なレベルで空間とつながるのです」。敷地の地味なルーツを覆い隠すように広がる緑豊かな庭園の上にそびえ立つ、かつては絶え間なく労働者や重機が行き交った8つのサイロは、今やボフィルの私生活と、数々の賞を受賞した建築・都市設計事務所の両方を包み込んでいる。
1963年に設立されたリカルド・ボフィル・タレル・デ・アルキテクトゥラ(RBTA)は、スペインで最も多作な建築事務所の一つであり、パリのレ・アルやクリスチャン・ディオールの本社、シカゴのJPモルガン・タワー、北京のシャングリ・ラ・ホテルなど、世界中に数多くの作品を残してる。しかし、ここで紹介するボフィルによるモノリシックな改修プロジェクトこそが間違いなく彼の最も個人的な作品である。空間の再利用における成功した美しい実験であり、それは今やオルタナティブな暮らしのランドマークとなっている。「当時の私のチームは全員が30歳未満でしたが、私たちは皆目を輝かせてボフィルの話に耳を傾けていました」とモヤは語る。「80歳に近づこうとしている人物が、これほど現代的で若々しい精神を持っているのを見ることは、私たち全員に希望を与えてくれました。」