Photographers in Focus:ジェフ・ウォール
真実と虚構を自在に操る写真の名手にとって、この世界そのものが舞台なのだ
「前衛の精神を受け継ぐ唯一の方法は、伝統との関わり方を実験することだ」、バンクーバー生まれの写真家ジェフ・ウォールはかつて自身の初期作品についてこう語った。日常の情景をサスペンスに満ちた形で再構築した作品で最もよく知られるウォールは、1970年代に美術史家として写真の世界に入った。それ以来、彼の作品は19世紀の絵画、商業広告、ストリートフォトグラフィーなど、一見するとかけ離れた多くの要素を参照してきた。
このカナダ人アーティストの作品は、ロケーションでの演出やデジタル加工を取り入れた、彼が「ニア・ドキュメンタリー」と呼ぶ手法によって、写真本来の役割を覆している。彼の最も有名な作品の一つである『Mimic』(1982年)は、バンクーバーの路上でアーティストが目の当たりにした人種差別的な出来事を再現したもので、当時は撮影されなかった出来事である。この作品は、ストリートフォトグラフィー特有のドラマ性と即興性を備えつつ、映画セットのような厳密な精度で構築されている。この「作為」と「真実」の融合は、鑑賞者に、芸術形式としての写真と、記録媒体としての写真の役割について問いかけさせる。